2006年10月19日富山:小3男児突然死 事故直後AED使われず(あえぎ呼吸)
◆設置場所など見直しへ
市教委は、事故があった18日夜から19日にかけて、現場に居合わせた保護者に対し、少年団の指導者を通じて事情を聞いた。それによると、中央小体育館で練習を始めた際に、保護者は6人おり、村上君が倒れるのを見て同小の職員に連絡。さらに119番通報をした。同小には校舎1階の壁にAEDが備え付けられ、居合わせた職員はAEDの講習を受けていたが、体育館に運んで使用しなかった。また、少年団の指導者もAEDの講習体験があったが、倒れた当時、現場にはいなかったという。市消防本部によると、救急車が到着した時点では、すでにAEDが効果を発揮しない心肺停止状態になっていた。
こうした事態を受けて市教委は19日夜、同市堀切の市総合体育センターで、市内37のスポーツ少年団の指導者や小中学校長、PTA関係者ら約100人を集めた会議を開き、事故について報告した。この中で市教委側は、市内の全15小中学校などに配備されているAEDについて「施設の管理者だけでなく利用者も設置場所を把握し、使用できるよう講習を受けてほしい」と要望した。
市教委は、スポーツ少年団の指導者や希望する保護者を対象としたAEDの講習会を近く開催する考え。設置場所についても、夜間は校舎内から、利用者のいる体育館などに移動させることを検討する。
この日、村上君が通っていた荻生小では、午前8時15分間から緊急の全校集会が開かれ平野祥子校長が、事故について報告後、「体の調子が悪いときはいつでも先生に教えてください」と呼びかけた。
集会では、多くの児童がすすり泣きながらうなだれたという。
市教委は、県教委に対し、子どもの相談に乗るスクールカウンセラーの派遣を依頼した。
「読売新聞2006年10月20日(金)」
倒れた直後あえぎ呼吸か 教諭ら普通と判断、AED使わず=富山
◆普通の呼吸と判断 AED使用せず
黒部市植木の市立中央小学校体育館で18日夜、市立荻生小3年の村上幸翼(こうすけ)君(9)がバスケットボールの練習中に突然倒れて死亡した問題で、村上君が、倒れた直後に危機的な状況を示す「あえぎ呼吸」をしていた可能性があることが20日、分かった。自動体外式除細動器(AED)は、呼吸がないのを確認して使用するのが通常の手順とされ、同小の教諭らは、村上君が普通の呼吸をしていると判断し、AEDを使用しなかった。
市消防本部によると、人工呼吸や心臓マッサージといった心肺蘇生(そせい)法やAEDの使用は、呼吸していないことを確認した上で行うのが通常の手順だが、あえぎ呼吸の場合は蘇生法を行う必要がある。
あえぎ呼吸とは、何回か深く息を吸ったり、速く息をしたりし、その後、呼吸をしなくなる状態で、生命に危険が迫っていることを示す。救急車で搬送中、心肺停止状態だった村上君は途中で1回息を吐いた。これを確認した救急隊員が、後で医師に状況を説明したところ、あえぎ呼吸の可能性を指摘されたという。
救急車の到着前、現場に居合わせた保護者は、当時の村上君の様子について「2、3回大きな呼吸があったような気がする」と市教委に話している。 また、保護者に呼ばれて職員室から駆け付けた中央小の男性教諭は、読売新聞の取材に対し「『うっ』と息をしていた。呼吸していたのでAEDは必要ないと思った」と話している。
市消防本部は「断定はできないが、話を聞く限り、救急車の到着前にあえぎ呼吸をしていた可能性はある」としている。市消防本部によると、学校教職員向けの講習では、意識、呼吸、血液循環を示す兆候がないことを確認した上で蘇生法を行うよう指導しており、あえぎ呼吸のような特殊なケースまでは教えていないという。
今回の事故で村上君は、午後6時5分ごろに倒れ、同11分ごろ救急車が到着したが、すでにAEDが効果を発揮しない心肺停止状態だったという。