2014年8月12日園児のプール事故が繰り返される要因とは?
幼稚園、保育園は事故が起こりやすい? 園児のプール事故が繰り返される要因とは
2014年08月12日06時00分東スポWeb
教訓生かされず…なぜ園児のプール事故再発する?
京都市上京区の保育園「せいしん幼児園」のプールで、男児(4)が意識不明になる事故があり、数日後に死亡した。子供はプール遊びが大好きなものだが、まだ泳ぎ方を知らない子が多い幼稚園児、保育園児に事故はつきもの。園側の安全管理の意識に問題はなかったのか…。
京都府警上京署によると、男児は7月30日午後2時ごろ、同園のプール(深さ約70センチ)であおむけに浮いているのが発見された。水は深さ20センチで張られていた。病院に搬送されたが、今月6日に亡くなった。司法解剖の結果、死因は低酸素脳症だったが、プール遊びとの因果関係はまだ分かっていない。
男児は当日の1時45分ごろからプール遊びを始めた。約30人の4歳児も一緒だった。2人の保育士が付近で様子を見ていたという。「上がりましょう」と声をかけたところ、浮いているのを発見した。同署は業務上過失致死の疑いも視野に捜査を進める。
幼保業界のリスクマネジメントに詳しい「アイギス」代表の脇貴志氏は一般論として、「幼稚園、保育園は構造的に事故が起こりやすい。たとえば、園の人員の配置基準は3人の0歳児に対して保育士は1人。火事になったら2人を両脇に抱えて逃げて、残り1人の子はどうするんだと思うんですよ。安全に根拠がないわけです」と語る。
安全に対する園の職員の意識も低いことが多いと脇氏は言う。
「『子供が好き』という動機でこの業界に入ってくるけど、『子供の命を守る』という意識は少ない。事故が起きることは特別なことだと思っているんです。でも、実際は事故が起こらないことが特別なんですよ」
一方、リスクを恐れすぎた園もある。「床と廊下の段差をなくした『バリアフリーの幼稚園』もある。やり過ぎですよね。つまずいて転んでけがをする危険性を認識する機会を子供から奪っている」(脇氏)
保護者の側も園に対して無理難題を投げつけてくる。「説明会などでは、保護者が園に『絶対に大丈夫です』という回答を求めたがる」(同)
だが、子供は走って転ぶこともあれば、友達とけんかしてけがをさせることもある。「絶対大丈夫」なんてことはありえない。園も保護者も迷走しているわけだ。危険性のあるものを排除するのではなく、危ないなりに目を光らせて対策を講じることが求められている。
2011年7月、神奈川県の幼稚園のプールで男児(3=当時)が溺死する事故が起きた。横浜地裁は今年3月、業務上過失致死罪で担任の教諭に罰金50万円の判決を言い渡した。また、両親は園や関係者に対して約7300万円の損害賠償を求めて提訴する意思を表明している。
この事故を問題視した消費者安全調査委員会は今年6月20日付で事故等原因調査報告書を発表。また、文科省と厚労省も同書に基づき、幼稚園と保育園を管理する全国の関係先に「水の事故防止」の通達を送っている。「京都の件が事故と認定された場合、報告書が発表されてから初の事故となる」(脇氏)
もし、この報告書を受けて同園が対策を協議したり、マニュアル化していなければ、過去の事故の経験が生かされなかったことになる。「危険な遊びほど子供はテンションが上がる」(同)
楽しい遊びと安全性のバランスをどのようにとるか、関係者は頭をもっと悩ませるべきだろう。