2009年12月17日埼玉:本棚熱中症園児死亡:保育士の重い過失認定
上尾の園児死亡:保育士の重い過失認定 市に3300万円賠償命令 /埼玉
2009年12月17日13時0分配信 毎日新聞
上尾市の市立上尾保育所で05年8月、榎本侑人(ゆうと)ちゃん(当時4歳)が本棚の中で熱中症にかかり死亡したのは園児への注意を怠ったためとして、両親らが同市に慰謝料など約8500万円を求めた訴訟で、さいたま地裁(岩田真裁判長)は16日、市に計約3300万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
判決は、保育士が侑人ちゃんの動静把握義務を怠ったことを重大な過失と認定。「保育所全体で児童の動静把握と安全確認に努めるべきだ」と指摘した。判決によると、侑人ちゃんは05年8月10日午前10時半ごろ、散歩から保育所に戻った。約1時間後に保育士が姿が見えないのに気づき、午後0時25分ごろ、木製本棚の引き戸(高さ約35センチ、幅42センチ)の中でぐったりしているのを発見された。判決は、2人の担任保育士が、散歩から帰っても人数確認もせず、1時間以上にわたり侑人ちゃんの行動を把握していなかったのは「生死にかかわる悪質な態様」と指摘。「事故前にも本棚に出入りする子どもたちが目撃されていたのに、職員会議で取り上げられず、保育士間の情報共有もなかった」と、保育所全体の危機管理のあり方にも切り込んだ。
判決を受け、記者会見した父高志さん(47)は「ずさんな保育を裁判所が認定してくれた。市はきちんと受け止め反省してほしい」と要望。母八千代さん(42)は「裁判が終わってもあの子が帰ってくるわけではありません。何で、保育園で死ななきゃいけなかったんだろう……」と涙を流した。
◇島村穰上尾市長の話
判決を厳粛に受け止め、二度とこのような事故が起きることのないよう、より一層安全な保育の実施に努めてまいります。【町田結子】